2018年寄贈による新収遺物展

ソウル歴史博物館では、過去と現在の記録と未来の遺産を確保するため、ソウルの歴史・場所・記憶に関連する資料について、毎年寄贈を受けています。今回の『2018年寄贈による新収遺物展』は、2018年に寄贈を受けた遺物の中から130点余りを厳選し、朝鮮時代から近現代まで、ソウルで起きた事件と人物の話が含まれている資料を中心に展示しました。今回の展示会で紹介された遺物は、大韓帝国時代に政治・外交顧問として活動したホレイス・ニュートン・アレン(Horace Newton Allen)、チャンチュン(奨忠)体育館・国会議事堂などソウルの主な建造物を設計したヨンセ(延世)大学校のキム・ジョンス教授、1988年ソウルオリンピックを誘致するために努力したソウル市立大学校のイ・ドン総長、第1世代の心理学者でありソウル大学校のチャン・ビョンリム教授に関する資料です。この他にも、ソウルの歴史・文化に関連する様々な寄贈遺物によりソウルの変化を読み取ることができます。本展がソウル市民だけでなく、ソウルに関心を持つすべての人に、ソウルの真の姿を知ってもらう貴重な機会になることを願います。

20世紀のソウル

ソウル歴史博物館では、寄贈者の崇高な寄贈の意図をたたえるため、展示室「20世紀のソウル」を設けました。この展示室は、ソウルの場所と記憶、人物の話について語る資料を展示し、その感動を観客と分かち合う目的で開設されました。『20世紀のソウル』展は、1950年代の韓国戦争、1960年代における開発時代のソウル、ソデムン(西大門)アートホール(1964~2012)、ABCニューヨーク製菓(1974~2012)、ソウルタイムカプセル(1994)など、5つのテーマで構成されています。
各テーマは、ソウルの場所と人々に関する歴史的意味があり、記憶に値する価値を持っています。本展では当時の様子や人々の活動などがくっきりと分かる資料を厳選し、まるでタイムマシンに乗って当時に戻ったかのように臨場感あふれる構成を試みました。『20世紀のソウル』をご覧になり、馴染みのある場所や人々について、もう一度考えるきっかけになれば幸いです。

ハニャン(漢陽)両班の立身出世

ヤンバン(両班)とは、文官と武官の両方を指す言葉です。高麗時代にも「両班」という言葉はありましたが、朝鮮時代になると、その官僚としての特色が浮き彫りになりました。朝鮮の両班は、科挙という官吏登用試験に合格し、官人の身分を得なければ、両班の間で認められませんでした。科挙は、文科の場合は儒学に関する知識を、武科の場合は兵器と武芸の能力が試されました。その他に、技術職である雑科がありました。この3つの試験の中で最も権威があり、社会的に優遇された試験は文科でした。朝鮮の国家統治の理念は儒学中心の文治主義であり、国を運営するためには儒教の素養が必要だったからです。官吏になることは家の栄光であり、社会的特権も色々とありました。このような理由から、朝鮮の両班は文科に及第するために生涯をささげました。科挙の準備をするためには、多くの時間と費用が必要だったので、庶民の良人よりは経済力のある両班の家から多くの合格者が輩出されました。

ウンヒョングン(雲峴宮)の生活遺物

ウンヒョングン(雲峴宮)は、興宣大院君イ・ハウン(李昰応)の私家であり、コジョン(高宗)皇帝が王になる前の12歳の時まで暮らした場所で、ソウル市が1993年に買い取りました。イ・ウ(李鍝)の子のイ・チョン(李清)氏が1996年にソウル市にウンヒョングン(雲峴宮)遺物を寄贈してくださり、ソウル歴史博物館が1998年にこの遺物を引き受けました。当博物館は、2019年の現在に至るまで、ウンヒョングン(雲峴宮)遺物収集・保存事業を持続的に行ってきました。現在、ウンヒョングン(雲峴宮)遺物は計1,504件7,940点に達しており、家具・工芸品・書画などの様々な分野の遺物が所蔵されています。当博物館はこれまで数回の展示会を通じてウンヒョングン(雲峴宮)遺物を公開してきました。しかし、重要な遺物だけが公開され、遺物すべては公開されていない状況です。これからは本展『ウンヒョングン(雲峴宮)生活遺物』を皮切りに、ウンヒョングン(雲峴宮)所蔵遺物すべてを順次公開してまいります。最初の展示会として伝統的な家具、海外から輸入された椅子、リビング用品、台所用品などウンヒョングン(雲峴宮)に住んでいた人々の手垢にまみれた生活遺物が展示されます。ウンヒョングン(雲峴宮)生活遺物は開化期の生活遺物があまり残っていない状況の中、伝統的な様式から現代様式への移行過程を如実に示す貴重な遺物です。

チョン・ボムテの決定的瞬間

写真家のチョン・ボムテは50年以上の間、ソウルの歴史的現場を目撃し、記録した報道写真記者であり、「生と死」という作品でパリ・ビエンナーレ国際展で入賞した写真家です。彼の写真には、4・19革命の導火線となった高麗大学校の学生デモ隊が襲撃されたシーン、5・16軍事クーデターの直後、ソウルキョンギ(京畿)高等軍法裁判所の法廷の様子、ベトナム戦争派兵の歓送会で息子を探す母、マンリドン(万里洞)で荷物を積むために待機している馬と御者、買い物を終えてヨイド(汝矣島)に渡るために渡し舟を待つ女性の姿が収められています。「チョン・ボムテ(1928~2019)の決定的瞬間」をテーマに、写真家のチョン・ボムテが真実に向き合って記録しつづけたソウルの歴史の現場、そして暖かい視線で捉えた都市の厳しい暮らしと日常が展示されます。本展で写真に沿ってソウルの古い風景を回想し、過ぎ去った時代と事件を振り返る時間旅行になることを期待しています。